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これこそが音楽だ! フランス・ヴァイオリン音楽のリアリティを奏でるボベスコのエレガントをぜひ聴いて頂きたい

これこそが音楽だ! フランス・ヴァイオリン音楽のリアリティを奏でるボベスコのエレガントをぜひ聴いて頂きたい

ボベスコの〝静かなる人気〟

溌剌としてエレガントなモーツァルトは優美と品格を両立させた逸品で、バッハにおける憂いと優美さの絶妙なバランスは絶品。美音に止まらず、気高い心境が見事に音化されています。彼女の比較的珍しいレパートリー、ベートーヴェンでの熱気に溢れた表情豊かな演奏、いずれもフランス・ヴァイオリン音楽の気風が美しくたっていた。ボベスコはフランス、ベルギーといったフランス語圏での活動が主でした。当然レパートリーもフランスものが重要です。サン=サーンスにおける崩しのない高貴な貴婦人のような佇まいと姿形、得意とするルクーでの波打つような情感と洗練された気品の両立、そしてリラックスした雰囲気の中で1曲1曲が個性的に輝き、ときに優美な表情を浮かべる小品の数々、正に「音は人なり」を代表する演奏です。ルーマニア出身で、フランスで音楽教育を受け、ベルギーで演奏活動と教育活動を行っていたボベスコは、フランコ=ベルギー派の演奏伝統を受け継ぎ、守り抜いたヴァイオリニストであり、技巧的に完璧で、力強く立派な演奏を行う世界的大家とは異なる、長い演奏伝統に裏打ちされた気品と魅惑が彼女の演奏と舞台姿に備わっていました。長いキャリアを誇り、また1970年代以降は日本でもマニアから絶賛され来日もあったにもかかわらず、残された録音は限られたものでした。スタジオ録音、ライヴ録音ともに彼女の演奏が聴けることは音楽ファンの至福。レコード盤にはリサイタルで示したボベスコの魅力がいっぱいに詰まっています。
ルーマニア出身の女性ヴァイオリニスト、ローラ・アンナ=マリア・ボベスコ(1921~2003)は1980年1月、ひっそりと来日しました。それは音楽事務所を通した日本公演ではなく、今は亡き上田應輔さん(輸入レコード店の主人)ら地方に点在する熱心なファンの招聘で初来日したものでした。この初来日公演は大きな話題を呼び、翌1981年4月には早くも2度目の来日が実現。当時フィリップス・レコードを発売していた日本フォノグラム株式会社は彼女の録音を企画し、米テラーク・レコードから録音技師のジャック・レナーを招いて、3度目の来日時の1981年9月9日から19日にかけて埼玉県新座市民会館でLP5枚分のデジタル録音を行いました。それらの演奏はボベスコのパリ音楽院時代の同窓生、ピアノのジャック・ジャンティ(1921~)とのデュオによるものであり、二人はパリ音楽院時代からデュオを組み、1948年には結婚するが後に離婚。しかし離婚後もデュオを続けた長年の共演者です。SPレコード時代には屈指の大演奏家らが、地方のファンの招聘で演奏会を開き、日本での録音盤を置き土産に残していってくれました。ローラ・ボベスコの評判は、静かに音楽ファンに広がって今日の人気を確立しました。

優雅な音色の魅力が引き出された好選曲の逸品。レア盤です。

ルーマニア出身でフランスやベルギーで活躍した名ヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコは、その人気に比べて残された録音はごく限られたものでした。これはベルギーのDUCHESNEレーベルへの円熟期の録音で、ボベスコらしい優雅な音色が引き出された好選曲の一枚。レア盤です。
ボベスコはまず音楽教師であった父からヴァイオリンの手ほどきを受け才能を開花させ、その後オークレールやヌヴーなどの師として有名なジュール・ブーシュリにヴァイオリンを学びます。パリ音楽院を首席で卒業。イッセルシュテット&ベルリン・フィルとブラームスの協奏曲で共演し、シュミット=イッセルシュテットに「これこそが音楽だ!」と言わしめるなど数々の伝説とともに華々しく活躍しました。
ボベスコの演奏スタイルは、自然でおおらかで、いわば往年の巨匠たちの美質を継承しているものといえる。ボベスコはフランス、ベルギーといったフランス語圏での活動が主でした。当然レパートリーもフランスものが重要です。このベートーヴェンも独墺系のヴァイオリニストの名演とは一線が引かれるが、独自の魅力を持っている。
ホアキン・ニン(1879-1949)は、キューバ生まれで、モーリッツ・モシュコフスキに学んだピアニスト兼作曲家。フランス、スペインで活躍しました。「四つの回想」は他に録音もない隠れた名曲。フランス風にセンス抜群な作曲に、燦々と降り注ぐスパニッシュ・エキゾチシズムが楽しい限り。ボベスコはこの曲を愛し各国で演奏しました。そしてぜひ聴いて頂きたいのがストラヴィンスキーの「イタリア組曲」。これは「プルチネッラ」のヴァイオリン版と言い切っても構わないもの。擬古典的なストラヴィンスキーの音楽は、作曲技法の神髄。イタリア・バロックの感覚と近代音楽の精神がこれほど幸福に融合した例もありません。鬼気迫るボベスコの熱演が凄まじく、麗しきヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコの魅力がたっぷりと詰まった逸品です。

通販レコードのご案内BE DUCHESNE DD6011 ローラ・ボベスコ イェルク・ピノフスキー ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ8番、ホアキン・ニン:四つの回想、ストラヴィンスキー:イタリア組曲

  • ルーマニア出身でフランスやベルギーで活躍した名ヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコは、その人気に比べて残された録音はごく限られたものでした。これはベルギーのDUCHESNEレーベルで録音されたライヴ録音ですが、驚くほど鮮明な音で、眼前で演奏されているような迫力に圧倒されます。
  • BE DUCHESNE DD6011 ローラ・ボベスコ ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ8番、ホアキン・ニン:四つの回想、ストラヴィンスキー:イタリア組曲|他
【収録曲】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第8番 ト長調 Op.30-3
ホアキン・ニン(1879-1949):四つの回想
ストラヴィンスキー:イタリア組曲

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